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2020年4月 5日 (日)

第98回「私の具象と抽象表現」

9月27日 (金)

201909sala

アジアへの眼差し

第98回のレクチャーは、西村一夫(版画家)にお願いした。タイトルは、「私の具象と抽象表現」だった。最初にこれまでの歩みを短く話してくれた。 生まれは滋賀県の彦根だった。彦根城周辺で遊んだ記憶があるという。

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小学校2年時に札幌へ来た。東京芸大美術学部デザイン科で学んだ。次第にデザインよりも版画に興味を抱き、版画家駒井哲郎に師事した。

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在学中に大きな体験をした。日本文化の源泉地たるシルクロードの彼方に関心を懐いた。意を決して、1974年に大学院を休学して、2年間イランへ留学した。イランのイスファハンを拠点にして、中近東やアジア世界を回った。イスラム文化の華を開示するイスファハン。そこで日本では味わえないものを感じたという。いろいろあった。星の光や目くるめくモスクなどのモザイクの美。荒地の中をロバに乗って動いたこともあった。

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それ以上に心に残るものあったようだ。それは、人間の形姿であった。特にヨーロッパ文化とは違うものがあることに気付いた。ヨーロッパでは祈る姿をみても、多くの場合、立ち、椅子などに座っている。ただ中近東やインドなどでみた姿はちがった。みんな土の上に坐していた。土、つまり身は大地とじかに接していた。大地に包まれるように横たわることもある。こうしてみんな<大地のいのち>と繋がっているのだ。

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これは西村が中近東などのアジア世界において見聞したものだった。なによりもそれは民衆の姿から学んだものだった。

さて大きな飛躍となったのが、1995年からのNYでの個展や、上海や北京などでのアートフェアへの参加だった。その契機となったのが東京・丸の内画廊での個展だった。この丸の内画廊の繋がりでNYブロードウェイでの個展が実現した。オープンニングでは多くの美術関係者や映画俳優なども顔をみせてくれた。さらにアメリカ人のJAIN(ジェイン)との出会いもあり、それ以後もNYで個展を開くことができた。アメリカでの個展を通じて、自分の作品が「普遍性」をもっていることを実感した。それはとても大きな体験となり、また一方大きな自信ともなったようだ。

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さて西村に絵のモティーフと何か。私がこのレクチャーで確認したかったことだった。西村は、それは「人間の形姿」であり、それは「アジアの宗教の中から」から学んだという。私の言い方をすれば、それは人々の「祈り」の姿勢から得たものだったにちがいない。

それは大地に坐り見えないものに手を合わせる姿だった。こうした<信仰>のカタチ。それがひとえに尊いものにみえという。西村は、その真摯に祈念する姿をフォルムの根元とした。だからであろうか。とても親しみやすいのだ。そしてまた心を癒してくれるものがあるようだ。

版画制作と平行しながら、レリーフや立体造形を制作している。そこでは、「形と色彩」の組み合わせを追求している。単純なフォルム。それにペイントした色。その2つが織りなすハーモニー。抽象的だが心と眼にスーツと入ってくる力がある。それはどうも色が持つ力のせいのようだ。「版」に拘らずに感性を自在に進展させる西村。これからもぜひ独自な世界を追求してほしいものだ。(文責・柴橋)

 

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