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2019年10月14日 (月)

第91回 「和の音を紡みだす作曲家」

2019年1月25日(金)

○講 師=二宮毅(作曲家)

1972年愛知県生まれ。

笹川賞、名古屋文化振興賞入賞。第一回東アジア国際作曲コンクール第一位。札幌市、福岡市、韓国テグ市を拠点に、日本の古典文学や伝統芸術に宿る情緒性を反映した作品を多数発表する。作品は毎年アジア各地の現代音楽祭に招待される他、欧州各地でも上演、放送されている。北海道作曲家協会会長。福岡市国際作曲家会議代表。作曲集団KALEIDSM主宰。福岡教育大学教授。2015年ボルドー音楽院(仏)レジデンス作曲家。

「和の音を紡みだす作曲家」

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第91回例会は、作曲家二宮毅を迎えた。現在、福岡教育大学で教えている。札幌に家があり、忙しく双方間を往復している。そんな忙しい中、時間をとってくれてレクチャーを引き受けてくれた。  

タイトルは、「東アジアの音を編む」。副題は、<現代の音楽創作現場>。東アジアを意識した内容だった。それは福岡という場が影響しているようだ。韓国へは船でもいける。距離的には東京より近いという感覚だ。

二宮は、音楽の国際化を意識しながら、より日本的な音を探りつつ、アジアだけでなく欧州にも作品の発表の場を広げている。音には、国境はないといわれる。たしかにそうだ。ただ言葉でいうのは簡単だが、いざそれを実行することは容易ではない。様々な障害もある。

そうした状況でも、すすんで日本の外へ出ていこうとする姿勢には、共感するものがある。私が、今回レクチャーを依頼したのは、過去に彼の新作を聞いたことがあるが、そこには和的な音が息づき、それがより現代化されていたことが大きい。それがとても新鮮に感じた。

実際に韓国のテグ市などや台湾で作品を発表している。そこでの逸話を披露してくれた。韓国では文化支援が手厚いという。

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ただ主催団体同志の「はり合い」があり、その狭間で苦しむこともあるという。また台湾では現地の若手映像作家と「人造衛星墜落」という曲でコラボしたが、そこにもやや文化意識の差を感じている。

二宮は、これまで「南波照間」「風の塔」「氷華」など発表している。

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今回その一部を聞かせてくれたが、そこには、風や水の形象が漂っていた。心が揺れ、広がりのある音だった。繊細な中に、現代性の種子があった。

最近は、和製オペラにも挑んでいる。函館や札幌で上演している。その映像を見せてくれた。「土方歳三 最後の戦い 義に殉じた魂」だ。土方は、幕末期の幕臣、新選組副長である。蝦夷まで来たが、1869年に箱館五稜郭戦争の際、34歳で戦死した。

この「土方歳三 最後の戦い」は、原作・広瀬るみ、台本・塚田康弘、作曲・二宮らにより作られた。いわゆる幕末の志士達が主人公。土方の他に、榎本武楊、黒田清隆、大島圭介などが登場する。

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よくオペラは、総合芸術といわれる。見た感じでは、オペラというより音楽舞台劇という感じだった。語りが多く、そのためやや動きが少なく、また衣装や舞台美術などの構成に課題もあるように思えた。が道内を舞台にした、こうした新しい音楽劇が誕生することを歓迎したい。二宮にとっても、この仕事は大きな収穫となったようだ。

これからも進取の精神を燃やして、和の響きを海の外でも奏で、さらに新しいオペラなどを創りだしてほしいものだ。(文責・柴橋)

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