« 第87回「上階(じょうかい)のをかし一山本東次郎家の人と芸一」 | トップページ | 第89回「イタリアの歴史的な地域資源の保存活用」 »

2019年1月24日 (木)

第88回「書で日本の言葉を」

2018年9月28日(金)

〇講 師=石井眞弓(詩人・書家)

1943年旧満州佳木斯(チャムス)生まれ。中国の思いから母を「私は 89歳になりました」祖父を「カンバス」私を「ノスタルジーの羊」と 「詩にしています。自由律俳句の種田山頭火を書作品にして10回各地を まわっています。東急デパート(札幌)美術ギャラリーで個展。今回 は花の名 漢字 ひらがな 風景などを瞬時にとらえ内面を表す俳句 の素晴らしさを表現したいと思います。詩集『黄金色の永遠』『きょう 「もすること』『閉塞』。現在、北海道書道連盟女流書作家集団、龍渕書会、 「日本詩人クラブ 北海道詩人協会 「極光」の会員。


詩と書へのあつい想い

Ishii01


第88回レクチャーは、サラメンバーの石井眞弓(書家・詩人)にお願いした。

タイトルは「書で日本の言葉」。レクチャーのために、作品を掲載した小冊子を作ってくれた。それをテキストにしながら話を進めてくれた。さらに書作品をレクチャー会場の壁に展示してくれたので、レクチャーを聞く上でとても大きな手掛かりになった。展示には、市川義一が協力してくれた。
Ishi03

全体としてあまり大上段に構えることなく、淡々と話を進めてくれた。三部構成となっていた。第1部では、書体と墨をかえての書。第2部は、自作詩を素材にした。第3部は、第5回「北海道横超忌 -吉本隆明―その遥かな射程を追って―」での評論家加藤典洋の講演に触発されたものをみせてくれた。

石井は、1943年に旧満州の佳木斯(チャムス)に生まれている。風土が異なる場で生まれ、日本に帰ってきた。故郷がいまは他の国の中に存在するが、旧満州での体験を石井はとても大事にしているようだ。自らの詩の中でも、自分のことを「ノスタルジーの羊」として譬えているほど。その詩に「数十年前 うぶ湯を使ったあの国 瓶に詰めた羊のおっぱいで 生きのびたわたし」とある。<羊のおっぱい>を飲んで育った<あの国>への想いが詠われていた。書は、その部分ではなく、後半の詩句<緑の海の染まった 被写体の羊さんに メッセージをおくる そのままでいいからね サルビアが真赤 一陣の風>を選んでいた。いずれにしても、幼い時に過ごした時間への想いが込められていた。

今回の小冊子の表紙と裏を「龍」の書字で飾った。表紙は青を空に、にじみを雲に見立て、龍が天から降りる様子を形象化した。そこにも、生地への想念を散見できた。
Ishi04

 石井は、詩と書の双方で自分の世界を築こうとしている。その双方が必要であり、切り離されないようだ。普通なら、やや中途半端といわれるかもしれないが、それが石井の表現の仕方であり生き方のようだ。

 新しいもの、現代的なものに関心があるようだ。自由な感覚で、物事を見詰めていこうとしている。それはかなり前から培われてきたものらしい。藤女子短大を卒業後も、デザインに関心を抱き、デザイン研究所で学んだ。さらに聴講生として道教育大札幌校の門を叩きデザイン学を修めた。こうした美への探求心は、今も健在である。その後は、山頭火や日本の心をテーマにして書にしている。

今回は、現代社会に対しての感慨を「崩壊」や「怒濤」、柳田国男の「先祖の話」から、「死が死として集まる場所がいまないということ、そのことを私は痛感しています」を選んでくれた。今という時代への危機意識が、これらの書字を書かせたのであろう。

一方で、はやり自作の詩を素材にした書は、とてもいい味を放っていた。「水芭蕉」や「ノスタルジーの羊」などは、自分の心情がうまく宿っていた。なにより女性的感覚をいかした言葉が、書になることで、より魅力を放っていた。さらに線が優美な流れをみせる「女は美しい」やにじみをいかした「戀」は、やはり男性の書では表出しないものが溢れていた。
Ishi5

今回みせてくれた書からは、淡墨や濃墨などを使いながら、いま一番好きな言葉を選んでいることを伺い知ることができた。

レクチャーはやや時間を残して終わった。もう少し、選んだ詩をどう解釈したか、それをどう書として筆を動かしたか、そんなことを触れてもらうとよかったとも感じた。(文責・柴橋)

« 第87回「上階(じょうかい)のをかし一山本東次郎家の人と芸一」 | トップページ | 第89回「イタリアの歴史的な地域資源の保存活用」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第88回「書で日本の言葉を」:

« 第87回「上階(じょうかい)のをかし一山本東次郎家の人と芸一」 | トップページ | 第89回「イタリアの歴史的な地域資源の保存活用」 »