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2018年1月26日 (金)

第79回 2017年10月27日(金)

講 師: 小杉恵(ピアニスト)

岩内町生まれ。北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース卒業。1995年札幌市民芸術祭新人音楽界に出演し、札幌市民芸術祭大賞を受賞。ハイメスコンクール第二位受賞後、ハンガリー国立リスト音楽院にて研鑽を積む。帰国後は、国内外でソロや室内楽など、多くのコンサートに出演。ピアノを故若林千恵子、高島真知子、薄井豊美、谷本聡子、故K.ゼンプレーニ各氏に、室内楽をJ.デーヴィッチ氏に師事。現在札幌大谷大学、札幌藤女子大学、札幌国際大学にて非常勤講師を務める。日本ショパン協会北海道支部、ハイメスアーティスト、札幌音楽家協議会、「Zongoraの会」「2000番の会」各会員。

リストの多面性を知った一夜

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第79回レクチャーは、ピアニストの小杉恵にお願いした。小杉は、ハンガリーのリスト音楽院に留学し、研鑽を積んだことがあり、演奏会でもリストの曲を取り上げている。そんな経験を生かして、「ピアノの魔術師」と呼ばれたリストの「人となり」と音楽性の魅力を存分に語ってくれた。日本人には、リスト音楽を愛する人が多いが、その実像について詳しく知ることが少ない中、とてもいい機会となった。

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リストは神童といわれ、9歳で演奏を開いたという。その才能が評価され、かなり多額な奨学金の給付をうけ音楽の都ウィーンへいく。そこでツェル二ーに師事している。

小杉は、リストには、「4つの顔」があるという。作曲家、演奏家、教育者、聖職者。特に演奏者としては、世にいわれるように超絶技巧を駆使した演奏は、「ピアノのパガニーニ」とまでいわれるほどだ。技巧を支えたのが大きな手であった。小杉は、手の大きなピアニスト達をランク付けしながら紹介してくれたが、上位に位置する。「指が5本ついている手が二つあると思うな。身体から10本の指が生えていると思え」といったという。
リストの手(石膏複製)をみんなにみせてくれたが、自分の手と重ねてみても、たしかにおおきかった。
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手の技巧を駆使した演奏は、特にパリの社交界で人気をうけ、気絶する女性も出たほどだという。それが戯画化されている。
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私は話を聞いていて、新しいリスト像を得ることができた。それは教育者としての存在の大きさだった。父の死により、生活のためピアノ教師として活動した。その場は、パリ、ジュネーブ、ワイマール、ブタペスト、ローマと広範囲だ。生徒は、有名無名を問わず、1000人を超えるという。その第一人者が、ハンス・フォン・ビューローである。同時代人の音楽家には、ベルリオーズ、パガニーニ、メンデルスゾーン、ショパン、シューマンらがいる。リストは、彼らから音楽的にも大いに影響を受け、また彼等の曲をピアノ用に編曲し今日に伝えている。それは、オペラ、歌曲、オーケストラ曲など80曲にのぼるという。その中には、ベルディのオペラ『リゴレット』の弦楽四重奏化、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」などもある。こうした編曲の仕事は、大きな価値をもつようだ。

 私的な面と音楽史におけるリスト。それを語る上で、忘れてならないのが、恋とワーグナーとの関係だ。マリー・ダグー伯爵夫人(作家でもある)と恋に落ち、1835年にスイスへ逃れる、約10年間にわたり生活を共にし、3人の子供が生まれた。
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その1人が、リヒャルト・ワーグナーの妻になるコジマである。そんなことで、ワーグナーとは縁戚を結んだ。リストの死も、ワーグナー絡みだった。1886年、バイロイト音楽祭でワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』を見た後、慢性気道閉塞と心筋梗塞で亡くなり、娘コジマの希望によりバイロイトの墓地に埋葬されたという。小杉は、バイロイトにある墓廟を紹介してくれた。華麗な演奏と波乱に満ちた人生を送ったリストだが、それとは対比的な清楚な空間だった。その対比が興味深かった。
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 小杉は、最後に自身がリストの曲を演奏した映像をみせてくれた。堂々として、ダイナミックなリストの音だった。やはり実際の音はいい。みんなも喜んでいた。時間の関係で、聖職者の道をどう歩んだか、また晩年の仕事(「巡礼の年」など)について、語ってもらうことができなかった。またの機会をまちたい。
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サラのレクチャーとしても、こうした名音楽家について学ぶプログラムを考えていきたい。小杉の、今後の演奏活動に大いに期待したい。


(文責・柴橋)

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