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2018年1月26日 (金)

第78回「木田金次郎美術館のこれまでとこれから」

第78回 2017年9月29日(金)

講 師: 岡部卓(木田金次郎美術館学芸員)

1969年札幌生まれ。岩手大学人文社会科学研究科修了(地域文化専攻)。1997年岩内町に採用、木田金次郎美術館学芸員として現在に至る。最初に担当した展覧会は「木田金次郎と神田日勝」。地域に根差した制作を行っていた木田金次郎を、地域に根差した活動から掘り下げることを意識して活動している。

思い出に深く残る展覧会は「木田金次郎の千石場所」2000年、「田上義也―北方建築の種」2010年など。


こぶりながら真珠のような美術館
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第78回レクチャーは、私の故郷である岩内から、木田金次郎美術館の学芸員岡部卓を迎えた。タイトルは、「木田金次郎美術館のこれまでとこれから」。
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話の構成は、二部構成だった。第Ⅰ部では、「木田金次郎美術館のこれから」。第2部では「木田金次郎美術館のこれまで」。通称「木田美」とよばれているが、岡部は、「ちょつと変った」美術館といいながら、その個性的性格に触れつつこういう。町がつくった美術館であること。美術館では、毎年「どんざ」祭を開催。作品のかなりの部分が、寄託の形でおさめられていること。木田金次郎に特化していること。年3本の企画を立ち上げ、これまで60本の展覧会を実施。そのつどポスターや図録を作成。こんなユニークな展示もあった。木田の作品をおさめた「額縁」や木田の蔵書にスポットを照射した「本棚」をテーマにしたものなど。
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このように地方美術館の中で、小ぶりながら真珠のような輝きを放っている。それができている最大の理由は、木田金次郎の「人となり」と作品が人を引き付けてやまないということであろうか。1954年の岩内大火により、大部の作品が灰に帰したが、その悲運から立ち上がって創作を続けた、その不屈性に感銘をうける人も多い。

また有島武郎と八木義徳により、2度にわたり小説モデルとなり、大きな話題となったことも力となった。木田は、多くの文人、ジャーナリスト、評論家、財界人と出会い交流していたが、彼らは、共通して木田の人となりと絵画が一致していることに強く感銘をうけたようだ。

木田は、岩内周辺を軸とした海や山を相手に、常に眼を澄まし、生気ある絵画空間を創生するために、貧を耐えながら孤軍奮闘した。そして日々真摯な姿勢を貫き、虚性を剥ぎ取った純生な美を、掴むために筆を動かし続けた。まさに画家の中の画家であった。

 岡部ら学芸員は、木田金次郎という「尽きぬ泉」から、水を汲むようにして、企画を立ち上げた。木田繋がりから、中央からたくさんの文人・評論家などが来岩し、美術館でレクチャーをしている。針生一郎、武田厚、池内紀、酒井忠康などたくさんいる。

岡部は、思い出に残る企画として「木田金次郎の千石場所」「木田金次郎の交流展」をあげていた。「千石場所」では、岩内、茅沼、神恵内、積丹の木田がキャンバスを立てた制作場を実証的に再考した。そこには、いまは姿を消した「ヘロカウルスの岩」もあった。木田は、50号のキャンバスを持ち歩き、現場主義を貫徹したが、木田が眼の位置などを変化させながら、ダイナミックな空間を造りだしていたという。
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また最近では、画家小谷博貞講演会の開催や、橋浦泰雄、田上義也をテーマにして、新しい視座で、木田交流圏に光を注いでいる。ちなみに小谷博貞と橋浦泰雄は、縁戚関係にあった。画家、社会主義者であった橋浦が、民俗学の道に入るきっかけをつくったのが、岩内での木田との出会いという。これまで見えなかったものが、クリヤーになり、木田交流圏は広く、深いものであったことが判明しているという。この紙幅が少なくなった。続いて「絵の町・岩内」として、「緑陰会」「山岸正己」「岩内高校美術部の活躍」「たら丸誕生」「前川茂利が撮った岩内」などを短く語ってくれた。
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第二部の「木田金次郎美術館のこれから」では、さらに作品との出会いを求めていきたいと決意をのべていた。作品の里帰りもあるという。女優小暮美千代が所有していた作品が、長い年月を経てリターンしたという。2018年は、名作『生まれ出づる悩み』が誕生して100年を迎えるという。これを記念し、札幌の「チカホ」空間でも展示を計画中という。

1人の画家の存在が、こうして町を活性化し、さらに全国へと交流圏(人脈)が拡大していく…。まさにこの美術館は、町の財産となっている。最後に一言。これからも町に根付きながら、美術館の新しいあり方を先見的に探ってほしい。(文責・柴橋)

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