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2017年1月13日 (金)

第68回「私の絵画制作とその見方」

68 2016930日(金)

講 師:鈴木秀明(画家)


1948年旭川市生まれ。函館市在住。
安井賞展(第31回、第32回)に出品。1992年第1回小磯良平展入選。1992年第26回現代美術選抜展出品。
東京都美術館主催「ベストセレクション美術2014展」出品。
1993年安田火災美術館財団奨励賞展秀作生。
1993年第7回青木繁記念大賞展出品。

現在、日本美術連盟会員、美術文化協会会員、新道展会員

「虚なるもの」に真実をみつめる眼
第68回レクチャーは、函館在住の画家鈴木秀明にお願いした。題して「私の絵画制作とその見方」。会場には新道展などの画家の姿が多くみられた。鈴木は、札幌で美術文化協会展、東京でグループ展を開催しており、そんな忙しい時間を割いてレクチャーをしてくれた。 
Suzuki01
私は個人的にも親交のある画家で、小画集づくりに協力させて頂いたことがあるが、「
これまでの歩み」をゆっくりと聞くことがなく、とてもいい機会となった。特に大学を卒業して、初赴任した根室の成央小学校では、専攻外の図工の専科を担当することを命じられたことが、「絵とは何か」を考えるきっかけとなったという。専門外の教科指導のためかなり苦労したようだ。特に「子供の絵の評価をどうするのか」「教授法をどうするか」などかなり重い課題となった。
Suzuki02
そうした課題を背負いながら、地元の公民館で開講されていた絵の講座に参加した。師
は画家の亀浦忠夫だった。師のアドバイスもあり、その後は新道展や美術文化協会展に出品することになる。ただ鈴木の凄い所は、初体験の絵づくりをしながら自作の評価を求めて公募展に出品したことだ。怖れを知らずに半年足らずで制作した100号「永遠に」で
新道展道新賞を受けた。
その後は、さらにシュールな画風を深め、「細胞」「殖」「プランクトン」などを主題にした。大きな賞(新道展協会賞、美術文化協会賞など)も受賞するようになった。デッサンは不得手であったが、技術などで製図法など学んでいたことが、線を引いたり、構図づくりに役にたった。
鈴木の絵画は、高度経済成長の繁栄を賛美する風潮とは逆向きに、解体する人間や不安
な空間を描いていくことになる。その典型が鈴木の代表作でもある「予感Ⅰ」であろうか。
ドアの前の変形した顔。壁には人影。実に不安な人間の状況が描かれていた。その後は公募展の「枠」から出て、積極的に対外試合にチャレンジしている。安井賞展に二回出品、安田火災美術財団奨励賞展(秀作賞)、第7回青木繁記念大賞展など数多くの場で評価されている。
Suzuki03
その前後の絵画の変遷をみておくと、80年代には「幻想的なリアリズム」の傾向が強まり、神話などを題材にしながら黙示録的な色彩が濃くなる。90年代には、古代ギリシャの彫刻が登場し、完全なる美も崩壊するという視座で、「古代幻想」をシリーズ化する。2000年代には、さらに神話から聖書世界へと幅を広げ、「ラザロの復活」「ネクロポリス」などを生みだしている。特に「ラザロの復活」はこれまでにない流動する空間を造りだしている。
私からみて、その「歩み」は大きな視点でみれば、「虚なるイメージ」が底流に流れているが、徐々にエロスや美の崩壊から、「死と再生・復活」というテーマに動いているように感じた。それは画歴が40年を超える中で、時代相を見つめる眼が大きく変化したことを示しているようだ。
全体を通じてこのレクチャーでは、主題の変遷と時代との相関性についてもうすこし詳しいコメントが欲しかった。内面の変化とはどういうものであったか聞きたかった。
Suzuki04
最後に独自な視点で編みだした20項目からなる「自己評価の視点」(造形要素)を語ってくれた。それは造形の特質を確認するためのもので、いわば「鈴木秀明式評価ルール」というべきものだった。自己評価基準でもあり、他者の作品評価基準ともなるようだ。
その1つの項目「個性」(観念・環境)には、「事物の個人的概念+想像力+抽象化+高
貴さ+情熱=強い表現=全体の調和=個性」となった。
これからも分かるように、マチエールやヴァルールのような絵画的要素だけでなく、この画家はかなり画家の「個性」を重要視しているようだ。
Suzuki05
(文責・柴橋)

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