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2017年1月13日 (金)

第69回「漆」

69 20161028日(金)

講 師:渡邊希(美術家)

1982年札幌生まれ。

東北芸術工科大学卒業・同大学院修了後、青森県弘前市で塗師・松山継道氏に師事。漆を用いて乾漆技法を主体に作品を制作。

漆造形、うつわ、小物、家具などを手掛ける。
2008
年初個展(札幌・大丸藤井セントラル)、以降札幌を拠点に国内外の展覧会に参加。
2014個展「東京青山・スパイラルホール」2008年から北海道新聞コラム連載。
2015年アートワーク「大阪・新ダイビル」「札幌大地みらい信用金庫」、銀座三越常設。

「漆の美」でアートワークに挑む

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第69回レクチャーは、美術家の渡邊希に「漆」と題して話をしていただいた。渡邊は、「漆」を工芸の枠にとどめることなく、その可能性をさまざまな形で発展させている。

「漆」を学ぶため東北の地を選んだ。東北芸術工芸大学で学び、さらに同大学院をおえた後、弘前市で漆塗師の松山継道に師事した。松山は江戸時代が続く伝統の津軽塗を継承しながら制作していた。

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ただ渡邊は、技術を習得しながらも、「器」を造る「職人の道」を歩むことはなかった。渡邊は、伝統技法を生かしながら、その「枠」から自由になりたかったようだ。自分の感性によりそいながら、どんなに厳しい道であっても自分が納得する「作品づくり」を目指した。つまり創造的な仕事をするアーティストになることを選んだわけだ。この決断が、おおきな転回点となった。

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 渡邊は、古くは仏像制作の1つの技法でもある「乾漆技法」を軸にして、新地を切り拓いた。食器や家具なども制作した。

今回は、そうした作品を会場にもちこみ、見せてくれたが、みんなそれらを手にしてその軽さや色合いの見事さに驚いていた。

渡邊は、この「乾漆技法」を活用し、さらに彫刻的作品に挑んでいる。その代表作が2015年にオープンした、大阪の北区堂島にある「新ダイビル」のアートワークだった。

この旧ビルは、調べてみると1963年に建築家村野藤吾により設計されていた。堂島のシンボル的存在だった。それを新ビルは、日建設計が設計、大林組が施工した。新しいビル空間は全体として約1000坪もあるという。

渡邊は、2体のアートワーク「景 ―朱―」「景―金―」を設置した。「朱」と「金」はそれぞれ「和の色光」を放ち、この空間で流れる「時間」に応じて変化した。また周りのガラスにも反映し、華やかさと新生な感覚をつくりだした。ビル側は、2つの「景」は、「都市と自然、内と外、人と建築」を繋いいでいると高く評価している。

また札幌にも彼女の作品が置かれている。札幌駅の近くにある「札幌大地みらい信用金庫」の空間においたアートワークだ。ぜひ見る事を勧めたい。

大型の透かし造形となっている。この透かし彫りは、漆の素材自体が芯となりしぜんと形を作りだしている。彼女の作品を理解する上の重要な作品となっている。

このように渡邊は、建築空間とのコラボレーションにより、和のティストを持ち込むことで、これまでにない美を造りだしている。

歴史が浅い北海道では、どうしても伝統的な「漆」工芸を学ぶ場も、発表する機会の少なく、いろいろな面で不利になっていた。その不利な状況を跳ね返して、「漆」でアートワークに挑む彼女の姿は、これからの若い人に勇気と自信を与えてくれるに違いない。

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こんな女性美術家が生まれたことを掛け値なく喜びたいし、これからも開拓精神を燃やして、いろいろな機会を生かして、「漆の美」のさらなる進展をみせてほしいものだ。

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(柴橋)

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