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2012年9月

2012年9月 2日 (日)

「私の漫画発想法」

「私の漫画発想法」              -開催日 2012719日(木)-

講師

森 雅之(漫画家)

1957年浦河生まれ。76年・漫画専門誌「漫波」でデビュー。96年「ペパーミント物語」で第25回日本漫画家協会賞受賞。著書に「夜と薔薇」「ポケットストーリー」「追伸」「散歩手帖」など。最新刊、絵本「すみれちゃん」。2003年・北海道立文学館にて「散歩しながらうたう唄」展。漫画でなければできぬものを、できるだけシンプルな表現で、と考える。

■会場 ト・オン・カフェ  札幌市中央区南9条西3丁目2-1マジソンハイツ1F

■受講者30

 


 

「アートとしての漫画」づくり―森雅之

 

浦河生まれの漫画家森雅之(1957年生まれ)に登場してもらった。

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 サラ(文化塾)としては、初めての漫画のレクチャーとなった。同時に、キャフェ内ギャラリーで個展「月とシャーベット」が開催されていた。実作品を見ながら、レクチャーを聴くことで、森雅之の世界を味わうことができた。会場には、遠路、弘前市から来てくれた熱心な愛好家らもいて、とても熱気に溢れたものになった。最初に三上敏視の音楽をバックにして、漫画作品を4本ほど、5分位にして編集してみせてくれた。それはどこか短編映画をみるような感じでとても美しかった。

 

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 レクチャーの題は、「私の漫画発想法」だった。それに沿った形で、いろいろと興味深い話を聴けた。

 

                           

高校時代から、漫画を描き始めたという。漫画が「人間の感情の機微」も描けることを学び、さらに当時の絵本ブームを横で見ながら、新しい絵と文の関係なども思索した。1976年に、漫画専門誌「漫波」(清彗社)でデビューした。日本の過去の漫画作品(名作といわれるもの)や大好きな映画・文学世界などを、自由きままに渉猟しながら、オリジナルな作品づくりにチャレンジした。

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レクチャーを聴きながら、私は、彼が描く漫画は、漫画という枠を超えていると強く感じた。「アートとしての漫画」であると…。そう感じた訳を述べておきたい。絵と文の関係がとても「豊かな結婚」をしているからだ。森雅之は、「漫画でなければできないことを、できるだけシンプルな表現」で行いたいという。「シンプルな表現」を可能にしているのが、練り上げられた文、それとしっかりと呼応する最小限のコマ割りである。文は短いストリーを形成していくが、終始、清楚で平明な絵と文は、実に無駄がなく、「間」を保ちつつ、とてもいい緊張感を保ち、人の内面の動き(心理)を描いている。そして読者の心の中にゆったりとした豊かな時間(懐かしい郷愁感や、夢のような非日常的時間)を付与してくれている。

 

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もう1、2点を挙げるとすれば、なにより絵のシンプルな美質さであろうか。

 

素朴な味わい、色の透明さ、そしてキリリとした描線。さりげない細部へのこだわり。そして忘れてならないのが、文(つまり登場人物の会話やナレーション)が、人の心理を捉まえながら、「詩的な力」を帯びていることも、「アートとしての漫画」を支えている要因であろう。レクチャーの中で、稲垣足穂が好きといっていたが、「言葉の力」をとても大切にしているのが、作品からも充分に伺われた。

 

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 普段はあまり聞けないプロとしての発想法も披露してくれた。興味深かったのが、雑誌・出版社側や読者層などの「シバリ」(制約)を「逆ばね」にして、ムリヤリ考えないで、自宅から都心までゆったりと散歩し、自由連想を大切にしながらヒントを得るという。また良いフレーズを見つけてメモを取るという。ピンチの時には、実際にあった出来事(思い出や記憶)を活用することもあるという。

 

森雅之は、どこか「夢みる少年」の風情を保っていた。何気ない日常や現実を見つめながら、そこに非現実な夢時間を垣間見る、そんな「夢みる心」を、これから年齢を加えていっても、さらに輝かしてほしいとおもった。

 

とても楽しく、またゆったりとした時間を過ごすことができたレクチャーだった。(文責・柴橋伴夫)

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